AI運用で AppSheet と PowerApps アプリを作成してみた

公開: 2025年10月17日
#ノーコード・ローコードツール

はじめに

筆者は、ソフトウェアエンジニアリングの学位を取得後、ベトナム最大のIT企業の一つにてテスターとしてキャリアをスタートいたしました。

主にマッチングサービスに関するビジネス分析、単体テスト、結合テスト、総合テストを一通り経験いたしました。

2017年にベトナムより来日し、2018年に株式会社ハイペリオンに入社いたしました。

その後、運輸管理システム開発プロジェクトおよび品質保証計画プロジェクトのメンバーとして参画するなど、品質管理のエキスパートを目指し経験を重ねております。

今回はAIを活用したアプリ開発をご紹介していきます。

AIサポート付きアプリ開発プラットフォームの紹介

Google AppSheetとは

Google AppSheetは、Google Cloudが提供するノーコード開発プラットフォーム
プログラミングの知識やスキルがなくても、既存のデータソース(GoogleスプレッドシートやExcelなど)を活用して業務アプリを簡単に作成できる。(※複雑なアプリを作成する要望がある場合、開発ロジックとAppSheet内用の数式の知識は必要。)

主な特徴と機能

  • ノーコード開発: HTMLやJavaScriptといったコーディングは不要、GUI上での直感的な操作や、用意されたテンプレートを組み合わせるだけでアプリを構築できる
  • 豊富なテンプレート: 在庫管理、日報、タスク管理など、様々な業務に役立つテンプレートが用意されており、これをベースにカスタマイズすることで、開発時間を大幅に短縮できる
    マルチプラットフォーム対応: AppSheet エディターで 1 つのアプリを作成すると、Web ブラウザー、タブレット、モバイルなどのさまざまなデバイスに自動的に適応する
  • オフラインモード: オフライン環境でもデータの入力や参照ができ、オンラインになった際に自動で同期される
  • 自動化機能(AppSheet Automation): 通知、メール送信、PDF作成、データ更新など、定型的な業務プロセスを自動化できる
  • Google Workspaceとの親和性: Google Workspaceユーザーは、Coreプランを無料で利用でき、Google MapsやGoogle App Scriptなど既存のGoogleサービスとの連携が容易

AppSheetにおけるGeminiの活用

AppSheetは、Googleの生成AIであるGeminiと連携しており、アプリ開発や業務の自動化をさらに効率化する。

  • 業務効率化への貢献: 手作業によるデータ入力や分類作業をAIに任せることで、ミスを削減し、従業員はより創造的な業務に集中できるようになる
  • Gemini in AppSheet: チャット形式での対話を通じて、アプリの設計や機能のアイデア出し、データ構造の検討をサポートすると、自然言語で作りたいアプリのイメージを伝えるだけで、アプリのたたき台を自動生成できる
    • AI Task: AppSheetの自動化機能「Automation」に組み込まれた機能、AIの専門知識がなくても、高度な「知能」をアプリに実装できる
    • AI OCR: 請求書や領収書などの画像から、日付や金額といった必要な情報を自動で抽出し、データとして保存できる
  • 画像分析・分類: アップロードした写真をAIが分析し、ジャンルごとに自動で分類するなどのタスクを自動化する

Microsoft Power Appsとは

Microsoft Power Appsは、企業内のユーザーが業務に特化したアプリケーションを短時間で開発できるようにする、包括的なローコードツール群
複雑なコーディングは不要で、アプリ、サービス、コネクタ、およびデータプラットフォームが統合されたスイートとして提供される。

主な特徴と機能

  • 迅速なアプリ構築: 基盤となるMicrosoft Dataverseや、様々な外部データソースと連携し、ビジネスニーズに合わせたカスタムアプリを迅速に作成できる
  • 他のPower Platformサービスとの連携: Power Automate(ワークフロー自動化)やPower BI(データ分析)といった他のPower Platformサービスと組み合わせることで、より統合的なソリューションを構築できる
  • 外部サービスとの連携: SharePoint、Dynamics 365、Teams、Azure Functionsといった他のMicrosoftサービスとシームレスに連携可能だけでなく、サードパーティのAPIにも対応しており、より幅広いサービスと統合できる
  • AIによるサポート: 最新のCopilot(AIアシスタント)機能が統合されており、キャンバスアプリの作成や修正、モデル駆動型アプリのインサイト提供できる

Power AppsにおけるCopilotの活用

Power Appsに統合されたAIアシスタントのCopilotは、自然言語でのアプリ開発をサポートし、開発者のスキルレベルにかかわらず開発プロセスを大幅に効率化し、迅速なアプリ構築を可能にする。

  • 自動生成: 自然言語での指示から、Dataverseテーブルやアプリの自動生成に加え、ワークフローの自動化も可能なので、ゼロから開発する手間が省ける
  • 数式作成の支援: Power Apps独自のローコード言語であるPower Fxの数式記述もサポートしており、正確な数式を提案してくれるため、開発者は数式を覚える必要がない
  • 画面のデザインと修正: HTMLやCSSの知識がなくても、自然言語で指示するだけで、ボタンやテキストボックスといったコントロールの配置やデザインを調整できる
  • データの分析: アプリ内のデータに関する質問を自然言語で行うと、Copilotが対話形式でインサイト(洞察)を提供するため、データ分析の専門知識がなくても、ビジネス上の意思決定に役立つ情報を得ることができる

AIサポートで超速アプリ開発の実践ガイド

AIサポート機能を活用し、AppSheetとPower Appsで簡単なアプリを迅速に作成する手順を解説する。
各プラットフォームで以下の要求を記入し、AIの案内に従ってアプリを構築していく。

店舗の売上を追跡するためのシンプルなアプリを作りたいと思っています。在庫リスト、商品追加、商品の詳細情報の3つの画面が必要です。

※注:
・Gemini for App CreationのAI機能を使用するため、AppSheetの有料ライセンス(Starter、Core、Publisher Pro、またはEnterprise Plus)が必要。
・CopilotのAI機能を使用するため、Power Appsの有料ライセンス(PremiumまたはPer App)が必要。
・なお、AI機能を利用には、AIクレジットが消費される。

Geminiを活かしたAppSheetアプリ開発

■ ステップ1:要求入力

AppSheetのホームページに「Create」/「作成」をクリックし、「App」/「アプリ」を選択、そして「Start with Gemini」/「Geminiで始める」を選択する。

統合されたGeminiの入力ボックスに要求を記入する。

実施ボタンをクリックするとき、サンプルアプリが準備される。

■ ステップ2:データ設定

AIの推奨に基づいて、テーブルとデータ構造を指定する。

保存すると、アプリが作成される。アプリ名は自動的に設定されたが、後で変更できる。
※ AppSheetはデータ駆動型プラットフォームなので、アプリを作成するとき、サンプルデータも自動的に作成される。

■ ステップ3:カスタマイズ

作成されたアプリはエディタ画面で要望より調整できる。サンプルデータもニーズに合わせて変更できる。

Copilotを活かしたPower Appsアプリ開発

■ ステップ1:要求入力

Power Appsのホームページに統合されたCopilotの入力ボックスに要求を記入する。

もう一つ方法は、メインメニューから「Create」/「作成」を選択し、「Start with Copilot」/「Copilotで始める」をクリックした後、Copilotの入力ボックスに要求を記入する。

実施ボタンをクリックするとき、サンプルアプリが準備される。

■ ステップ2:データ設定

AIの推奨に基づいて、テーブルとデータ構造(テーブル属性やテーブル関係、必須項目など)を指定する。
サンプルデータもこのステップに作成を指示できる。
※ Power Appsはモデル駆動型プラットフォームなので、事前に定義されたデータセットがなくても動作し、空のデータベースからでもアプリを作成できる。

保存すると、アプリが自動的に作成される。

■ ステップ3:カスタマイズ

作成されたアプリはすぐに要望より調整できる。

アプリを保存するとき、アプリ名も指定できる。

AIサポートでアプリ開発した成果物の確認とプラットフォームの比較

前記したAIサポートで開発したデフォルト状態のアプリ(カスタマイズなし)でレビューしていく。

Geminiを活かしたAppSheetアプリ開発

Google AppSheetを使えば、アプリを迅速かつ簡単に作成でき、たいていの要望には応えられる。
その後、機能(画面やアクションなど)を追加して拡張することも可能だが、スケーラビリティとカスタマイズ性には限界がある

※注:本デモンストレーションで表示されているデータは、自動生成されたサンプルデータです。

■ ホーム/ダッシュボード

個別のホーム/ダッシュボード画面が自動的に作成されていなかったが、後で手動で作成できる。
※デフォルトでは、販売一覧画面はアプリ作成時にホーム画面として設定された。(この設定は変更可能。)

■ 販売情報管理機能

・販売一覧画面
※この画面は、アプリのホーム画面として自動的に設定された。

・販売入力画面(追加モード)

・販売詳細確認画面

・販売入力画面(更新モード)

■ 商品情報管理機能

・商品一覧画面

・商品入力画面(登録モード)

・商品詳細確認画面

・商品入力画面(更新モード)

■ 顧客情報管理機能

・顧客一覧画面

・顧客入力画面(登録モード)

・顧客詳細確認画面

・顧客入力画面(更新モード)

■ サプライヤー情報管理機能

・サプライヤー一覧画面

・サプライヤー入力画面(登録モード)

・サプライヤー詳細確認画面

・サプライヤー入力画面(更新モード)

■ 在庫情報管理機能

・在庫一覧画面

・在庫入力画面(登録モード)

・在庫詳細確認画面

・在庫入力画面(更新モード)

■ その他

AppSheetでは、アプリを紹介するためのアバウト画面も作成された。この画面の表示される情報が変更できる。

Copilotを活かしたPower Appsアプリ開発

Microsoft Power Appsを使えば、アプリを速く作成できる
要求には応えられたが、Google AppSheetの成果物と比べると、成果物のアプリは完成度に劣る印象を受ける。
編集すべき箇所は多いものの、高いスケーラビリティとカスタマイズ性を備えている。

※注:本デモンストレーションで表示されているデータは、自動生成されたサンプルデータです。

■ ホーム/ダッシュボード

■ 在庫情報管理機能

・在庫一覧画面(※詳細確認含む)

・在庫入力画面(追加モード)

・在庫入力画面(更新モード)

■ 商品情報管理機能

・商品一覧画面(※詳細確認含む)

・商品入力画面(登録モード)

・商品入力画面(更新モード)

■ ストアー情報管理機能

・ストアー一覧画面

・ストアー入力画面(登録モード)

・ストアー入力画面(更新モード)

まとめ

本記事では、AIを活用したアプリ開発の概要についてご紹介しました。
各プラットフォームの成果物の長所・短所を比較しながらご解説することで、ご自身のニーズに最適なツール選びの参考としていただければ幸いです。

関連項目&参考ソース

Gemini in AppSheet を使用する
Power Apps における Copilot の概要

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